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銀←新ちっく
新八と沖田
※ ※
とある真夏の昼間、僕と銀さんは喧嘩をしました。
今となっては喧嘩の原因なんて覚えていません。
だけど僕は、これ以上銀さんと一緒にいたくなかった。
あまりにも暑い万事屋の中の温度差も手伝ってお互いの怒りはヒートアップしその日は結局、喧嘩両成敗とはならず有耶無耶のまま僕は万事屋の玄関口を叩きわんばかりに閉め実家に帰った。
自分の家を実家呼ばわりだよ。ほんと腹立つ。
家の中から銀さんの怒鳴り声が聞こえたけど何を言っているのかわからなかったし、聞きたくも無かったのでシカトした。
数歩先で一度振り返ったけど、万事屋の外形は変わらずでなんだか無性に寂しくて悔しくなった。
涙が少し滲んた。
次の日、僕は出かけた。
僕の向かう足は歩き慣れた万事屋への道ではなかった。
行き先なんてわからなかった。
お金も無いし、お弁当や水筒とかも準備してきてない。
無計画って言葉はこうゆう時に使うのだろう。
本来はこちらの道を曲がれば万事屋へと辿り着くけど、この日の僕は道を曲がらず真っ直ぐ続く道を選んでみた。
この道を辿ればどこへ行くのだろう?
そう思った時にはもう真っ直ぐな道を選んでた。
僕は何も考えず歩いてみた。
そうしたら、なんだか見知らぬ土地へ踏み込む緊張感と何か新しいものを発見した時のワクワクとする冒険気分になれた。
僕は自分ルールを決めてみた。
『歩く道は一本道』
簡単だけど、難しい。この一本道が行き止まりにぶつかったらおしまい。
そう決めてみたら少し気持ちが楽になれた。
見知らぬ道は大して何も変わらない土地だった。
たまに壁の向こうに生えた大きな樹の枝が道沿いにまではみ出ていたりもするけど、そこにあるのは変わらぬ日常を送る人々の生活感があって、その間に挟まれたこの一本道を進む僕もまたその人たちから見れば変わらぬ日常の一部分なのだろう。
道は途中狭くなったり、少し坂を上がるようになっていたり、そのたんびに僕は途中何度も後ろを振り向きたくなったけど何故かそうするのが嫌だったのでしなかった。
もうその時点で、僕はこの自分ルールに意地になってるんだろう。
坂を上がったところに小さな昔ながらの駄菓子屋があった。
あまり賑わっていない、時代に取り残されたような寂しげで懐かしい印象を受けた。
「・・・そういえば僕、家からずっと歩きっぱなしだったっけ」
こんなところに駄菓子屋があるとは思っていなかったから、今度銀さんと神楽ちゃんも連れてきてあげようかなぁ・・・なんて思ったら、あれ僕無意識に二人のこと考えちゃってるよ。
「ふふっ」
「何がおもしろいんでィ?」
「いえ、対したことじゃないんですけ・・・・ど?」
ん?
何故かそこには沖田さんがいた。しかも僕より先に駄菓子屋の先客だった。
「なんでここにいるですか沖田さん」
「ここは俺のサボりのメッカでして。そうゆう新八君こそ、こんな寂れた駄菓子屋にお一人ですかィ?」
こら寂れたって言っちゃダメ!僕もそう思ったけど言っちゃダメ!
後ろをちらりと見た沖田さんに、僕はつられて目線を向けた。
奥の座敷は普通の民家で、平和そうなおばあさんがのほほんと笑っていた。
「たしかにここなら気づかれにくいですけど、さぼってばかりいると土方さんがあとで怖いですよ」
「仕方がねェ、その時は土方コノヤローには亡き者になってもらうしかねェな」
「アンタはいつもそれだろ!」
どこまで本気なのか愛刀をギラつかせドス黒い笑みを湛え眼を光らせた沖田さんに僕は呆れ、お店のおばあさんにソーダ水を注文した。
家を出てからやっと人と口を聞いたので、少し心が弾んだ。たとえ相手が沖田さんでも。
キンキンに冷えたソーダがシュワシュワ口一杯に広がり、風呂上りに一杯のいちご牛乳を飲んだ時の銀さんみたいに親父臭く「クハアッ」と満足げな声をだしたら、沖田さんに笑われた。
「イイ飲みっぷりだねェ、おいババア俺にも同じ物をくれ」
ソーダを口につけた沖田さんは僕と同じようなマネをして、僕を笑わせてくれた。
案外ノリのいい人なんだなぁ。
「大変ですねその格好も」
「決まりだから仕方がねェさ、大丈夫。新八君の分も近藤さんが用意してくれてまさァ」
「そっちの大丈夫かよ。近藤さんにありがた迷惑だって伝えて置いてください」
ついでに姉上を嫁に欲しいなら僕の屍を超えてからにしてくださいってね。
「・・・手ごわいお相手でさァ」
てっきりおちょくられると思っていたのに、静かに微笑まれ肩をすくまれた。
本当この人はどこまで本気なのだろ。
ソーダを飲みながら僕がここにいる理由を聞かれた。
銀さんと喧嘩して万事屋に行き辛いなんて、なんとなく言うのが気恥ずかしかった。
道草?散歩?サボり・・・って沖田さんと一緒じゃん。
妙な虚勢となけなしの意地が勝ったので
「世界地図からの脱走」
って答えた。
自分にしてはイケてね?って酔いしれていたら、中二臭いって言われた。
なんだよもう。
※ ※
>>Dear you お題
たぶん続,くと思います時間かかるけど
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