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短文 付き合っていない銀新
※ ※
頬に触れた唇が「ちゅうっ」と可愛らしい音をだしそっと離れた。
16の少年のほっぺにキスをする三十路間際の大の男の姿はなかなかシュールな光景で、ぶっちゃけキモかった。
おっさんの厚い唇が触れた時の背筋を這うゾワゾワ感など特に。
少年にとっては未だに慣れない事であるが、すでに日常茶飯事になっているので無理やりにでも諦め意識しないよう務めている。
そんな少年のささやかな努力をまったく理解していない男は、今日もキスをしたい時にする。
例えそこが家でも外でも。
銀時は新八にキスをするのが好きだった。
新八の気持ちなどおかまいなしに頬でも額でもうなじでも耳でも手の甲でも足のつま先でも・・・・・兎にも角にも新八の身体であればどこでもキスするキス魔人だった。
自分から触れてくるくせに、離れた後は特に嬉しそうでも幸せそうでもない、ようはいつもどおりのあの表情でいるので初めてキスされた時は一体何の嫌がらせが始まったのだろうかと憤った程である。
銀時が毎日飽きもせずに唇を新八の身体にくっつくている時間は様々で、今のように軽く触れてくることもあれば長い時間かけて触れた箇所を情熱にしつこく離さないでいたり、何度も同じ場所を口付けていたり。
その行動はすべてある日突然に前触れもなくしてくるので、新八は未だに銀時へのガードができない。
警戒していると触れてこない癖に、物事に集中していたりまったりお茶をすすって油断しきっている時に触れてきたり、揚句には外で買い物中や仕事中でもしてくるので、いい加減わざと狙ってくるのはやめろと怒ったところ何故かきょとんと顔を傾げられた。
なんと奴は無意識に即実行していたのであった。
その事実を知ったときの新八は目にも当てられぬ様子であった。
地面に力なく砕け落ちガックリ落ち込む新八の姿に分からないながらも銀時は元気のない新八の為に優しく抱きしめ、いつもよりも長めに新八のさらさら黒髪ストレートヘアにキスを送った。
新八はますます元気を失った。
「銀さんはどうしてキ・・・・キスをするんですか?」
今までずっと素朴に思っていたが何故か聞くに聞けなかった疑問を勇気出してついに聞いた。
この男からの答えが純粋に怖かったからだった。
キスという単語を口にしただけで恥ずかしそうに頬をさくらんぼ色に染めたチェリーボーイの姿に銀時はじっと見つめ徐にさくらんぼ色の頬にキスをした。
ちゅう・・・という音が自分の耳近くから聞こえ新八はヒィッと身体を硬直させた。
銀時は頭の後ろをガシガシ掻き、いつもの死んだ魚の様な目でいった。
「唇にちゅーしたいから」
「・・・・・・・・・・・はいぃ?」
ナニソレ。
はてなマークだらけな新八をよそに、銀時はそれ以上答えるのが面倒だと言わんばかりにまた新八の額にキスをした。
痺れた脳で必死に銀時の言葉の意味を探す新八は、そういえばと思い出す。
銀時はキスをしたい時にしてくる魔人で奴は顔中にキスの嵐を巻き起こすが、いつだって唇には一度も触れてこなかった。
「だって、唇にキスしていいのは恋人だけだろ。銀さんはお前の未来の恋人の為に唇だけはとっといてあげてんだよ」
本当は俺がしたいけど。
最後にそう付け足されて、新八はぼけっと間抜けな質問をした。
「・・・・銀さんって、僕のこと好きなの?」
うん、と頷かれた。
死んだ魚の眼であっさり返答してきた奴の顔は新八の信憑性に掻ける癖によく見れば耳が赤かった。
新八は不覚にも可愛いと思ってしまった。
ので、多分。きっと。
新八はその場の雰囲気に飲み込まれたのだろう。
あろうことか、新八はつま先で伸び上がりそっと触れるだけの口づけを銀時の下唇にした。
目をひん剥く銀時の無防備な驚きように笑いかけた新八は、がぶりと唇を奪われた。
16という短い人生の中でキスで酸欠に陥ったのは初めての経験だった。
遠のく意識の中で、あとでちゃんと言わなきゃ・・・と力なく思った。
僕も好きですって。
※ ※
>>Dear you お題
ちゅーしまくってほしいってだけです
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