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みんな学生設定
【エースと恋に落ちた少女】 設定 坂田とパチ恵、沖田とちょっと神楽
※ ※
「志村さんってさー、坂田センパイと付き合ってるの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイ?」
恐怖のテスト期間の真っ只中、今日も死闘を繰り広げた学生たちが互いの健闘を分かち合っていたホームルーム終了後。
パチ恵はクラスの女子数名からの問いに、思考が真っ白になった。
キラキラ輝く純粋さと他人の恋愛事情に鼻を利かす女特有のお節介な雰囲気。
それらに気圧されたパチ恵は思わず立ちろいだ。
坂田センパイとは、パチ恵がマネージャーを務める剣道部エースのあの坂田センパイだ。
てんでバラバラの銀髪モジャモジャ頭にいつも眠たそうな半開きの瞳は怠惰で温厚な雰囲気を漂わせ、身長や均整のとれた肉体で竹刀を振るう姿から女性生徒たちから人気があった。
実際にも部活中彼を覗きにくる女性生徒も多く、マネージャーであるパチ恵がいつも部員達の邪魔にならぬよう厳かに追い返す事もあった。
だが、自分はあくまで剣道部マネージャーで彼の後輩。
坂田と接する時間は他の女子よりも確かに多いかもしれないが、自分たちはそうゆう間柄などではない。
もしも質問されたような妙な噂が流れているのであれば、自分は坂田のファンに狙い撃ちにされてしまうかもしれない。
ただでさえ彼女らを差し置いて、マネージャーという地位になってしまったことで恨まれているのに・・・
「あれー?違うの?」
「えーうそだー」
「いや、ウソと言われても・・・」
何ゆえそこまで拘るのかだろうか。
己の方こそ逆にこんな質問をされねばならなくなった経由を聞きだしたかったが、クラスメイトの沖田に遮断された。
「パチ恵ー旦那のお迎えですぜぃ」
「総一郎君さー、その旦那ってのやめてくんない?一応俺ら学生なんだからさ。なんか年寄りみたいでやなんだけど」
「旦那こそ総一郎って誰ですかい」
扉口に寄りかかりぺしゃんこの鞄を肩に引っ掛け背を少し丸く屈みながら佇む姿は、まるで彼女を迎えに来た彼氏のようで、パチ恵はタイミングの悪さにゲッと唸った。
昇降口での待ち合わせだった筈なのに、何故こんな時に限って余計な気を利かせる様な事をあの男はするのだろう。
背中に突き刺さる疑惑の視線たちから逃げるようにパチ恵はさよならを告げると、急いで荷物を腕に抱え坂田の元へ向かった。
呑気に「おー」と手を振るうあの顔の鼻の穴に指を突っ込み鼻フックを掛けてやりたい。
そんな衝動を抱えながら。
□
質問には必ず解答が含まれている。
昔どこかの誰かが言っていたようなそうでなかったような。
沖田は教室の窓から青空を眺めながら、先ほどの光景を思い浮かべていた。
学生が帰宅するにはまだまだ日が浅い。
しかしテスト期間中は毎回午前だけで終わり、午後にはもう校舎から追い出されてしまう。
当然部活もしばらくはお休み、いつもよりも早く帰れる学生は帰ってお勉強をする者も入れば、その時間を有意義に遊びの時間に宛がう豪胆な者もいたりするだろう。
さて先ほど教室から出て行った剣道部マネージャーとそれをわざわざ教室まで迎えに来た剣道部エースはどちらの部類に入るのだろう。
真面目なメガネっ娘は間違いなく前者だろうし、モジャモジャ頭のセンパイは後者に見える。 が、果たしてまったくそうであるのだろうか。
例え遊びの時間に宛がうが為にわざわざ少女を迎えに来たのであれば、まったくそれは不正解。
彼女の性格を考えればそれを許すはずもない。
ともすれば、剣道部エースは後者でなく前者と考えれば妥当であるがそれもまた腑に落ちない。
ここでまた、『かもしれない』と付けた上での話をしよう。
真面目にお勉強ということには程遠く見える旦那に活を入れるために、パチ恵が自ら監視という名のお勉強会を開いたのかもしれない。
「それだったら放課後迎えに行くべ」と旦那が言い、「じゃあ昇降口で待ってますね」とパチ恵が言ったのかもしれない。
だが旦那はクラスが終わるとすぐに向かったのは昇降口でなく、少女のクラスだったのかも知れない。
そしてお迎えに来られたパチ恵は、他の女どもの視線を一身に浴びながら旦那の元へ向かう羽目になったのかもしれない。
これがさっき見た光景だ。だが、問題はこの後。
旦那は「うっし、じゃ俺んち行くか」と下心を厚い面に隠しながら言い、それに対しててっきりファミレスとか図書館だと思い込んでいたパチ恵は「えっ!?」と驚くかもしれない。
「当たり前だろーそんなん落ち着いて屁もこけねえよ」
「いえ、屁はしなくていいですから」
「それに金ねえし。ついでに飯作ってよ」
「えぇー」
「いいじゃん頼むよ優秀な剣道部マネージャー様ぁ」
「んもっ!いつもソレなんだから・・・」
「やりぃっ!」
―――――ってなったのかもしれない。
そして帰り途中で冷蔵庫の中身を聞かれた旦那はアイスとイチゴ牛乳だけだと告げ、それに激怒したパチ恵は「だからあんたは糖尿なんですよ!!」って説教したかもしれない。
そんなパチ恵に旦那は不貞腐れながらもニヤニヤしているかもしれない。
「んじゃついでに買い物でもしてくか。金はだすから」と放課後デート気分な旦那に、パチ恵は(あれ、お金ないんじゃなかったっけ?)と顔を傾げるも口には出さす素直について行くのかもしれない。
食材の入った袋を持った旦那はアパートに着くと「ちらかってっけど自分家だと思って寛いでってよ」って言い、「あっおかまいなく」とパチ恵はお行儀良く返事を返したかもしれない。
そして、パチ恵は「お邪魔します」と丁寧に挨拶をし狭いアパートに入っていったのかもしれない。
ちまみに旦那は一人暮らしだ。
そして、パチ恵を部屋の中へ誘うことに成功した旦那は秘かに部屋の扉に鍵を閉めちゃったかもしれないし、閉めなかったかもしれない。
―――が、『かもしれない』はここまでとしよう。
こんな言葉を聞いたことがあるだろう。
人の恋路を邪魔するものは、馬に蹴られて三途の川。
ここから先は、俺がとやかく言う話ではない。
青空の下、颯爽と原付を運転するモジャモジャ頭とその背に乗るお下げのメガネっ娘。
そんな爽やかな風景に、未だに教室に残っていた女どもは羨ましそうな溜息をこぼしていた。
「なーんだ、やっぱ付き合ってんじゃん」
「ねー。いいなー志村さん、坂田センパイの原付に乗れてー」
「知ってるー?坂田センパイってさ、原付の後ろ誰にも女の子乗せないんだってー」
「あー有名だよねその話。後ろ乗っけるのは彼女だけにしてるんだって」
「じゃあやっぱりあの二人、付き合ってるんだー」
うーらーやーまーしぃー
ぎゃあぎゃあ騒ぐ女どもの会話の中に、一体どれだけの真実が隠されているのか
それに正確な解答を得るのは今の時点でどこにもなく。
正しい答えが分からぬまま、真新しい疑問が彼女らの中で真実と化し
そしてまた、当の本人が知らぬまま
最初の質問は、いつの間にか解答となって俺達の間に染み渡っていくのであった―――。
「・・・長いアル」
※ ※
>>postman お題より
沖田君のモノローグが終わるのを待っていた神楽ちゃん
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