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す   スタンダードで結構

3Z銀新












※         ※

「今年のクリスマスって土曜日なんだってー」
「そうですね」
「次の日は日曜日だからそのままお泊りもできんじゃねーの?朝までコースも余裕なんじゃねーの?」
「そうですね」
「そうですねってお前。それっておっけーってことでいいの?朝まで張り切っちゃってもおっけーってことでいいってことかおいいいい!?」
「先生うるさい!」
「がふぅっっっ!!!」

 メガネが愛らしい男子生徒から必殺の鼻フックを食らった国語教師は、そのまま痛みを堪えた。
 セクハラ発言をかます不良天パ教師を懲らしめた新八は、そのまま現在の作業を続行する。
 摘み上がった書類やプリント、教材などを整理整頓しお菓子の空袋やキャンディーの包み紙などのごみを纏め、床のチリや埃を箒で払えば、あらかた国語科準備室は綺麗になった。
 この教室ともしばしのお別れである。
 明日からは、短い冬休みの到来。
 少し寂しさを思うが、いいかげん掃除くらいキチンとしてやってほしいと思うのも本音であった。
「先生、掃除終わったんで僕はこれで失礼します」
「えっ!?」
「なんですかそんなに驚いて」
「いやいやお前何いっちゃってんの。これからだろう俺達の時間は」
「・・・・ぉ、お邪魔しました!」
「こらこらこら待てこらああああああ!!!」

 扉に張り付く新八と新八に張り付く銀八。
 どっちも譲らぬ攻防戦だったが、先に停戦を求めたのは新八の方からだった。
 潤んだ大きな瞳と少し困ったように垂れた眉が銀八を見上げる。

「先生、僕明日はバイト入れてるんです」
「はぁー。お前ね、何も明日まで働くことなくね?そんなに生活に困ってんなら俺んとこ来いって何度も言ってんだろ。俺が外で働いて、お前は家の中を守る。完璧じゃね?すごくね?」
「完璧どころか不完全だらけだよ。すごいのは先生の髪と頭の中だけです」
「つーか、マジでバイト入れてんの?これぽっちも俺の入る隙間ねーの?」
「・・・・だって・・・」
 小さく呟いた新八は戸惑いを隠せない。
 軽い口調とは裏腹に、新八の背中を強く掻き抱く腕の紅い視線は、冬の夕日のようにぼんやりと熱く新八を照らしている。 
 何も話せなくなった新八は、ただ銀八の腕の中で真っ赤に染まり縮こまることしかできなかった。
 
 新八を困らせている自覚はあったが、今年のクリスマスは今までとは違う。
 リア充氏ね!とか地球上の全カップル滅びろ!とか悪態ついていた銀八にも、ようやく訪れた春であった。
 真冬ではあるがまさしく春である。今年のクリスマスはガンガンに燃え上がる予定だった。
 が、そのプランが今目の前で破綻しようとしている。
 引き止めたい―――でも、これ以上新八を困らせ迷惑をかけたくない。そして嫌われたくない。

 銀八は腕の力を緩め、新八を優しく抱きしめた。
 銀八の雰囲気の変化に気づいた新八は、そっと顔だけを上げ銀八を覗き込むとやんわり笑われた。

「しかたねーなぁ」
「先生・・・」
「分かったよ。な?だからそんな顔すんなよ。俺の鋼のような決意が緩むだろ」
 頭を撫でられ、そっと身体を離された。
 そのとたん、どうしようもない寂しさに追い立てられた新八の方だった。
 離れていく銀八の腕を、夢中で掴む。
「せ・・・・先生」
「新八?」
 泣き出しそうな顔になる新八に戸惑った銀八は、放したはずの新八の身体を再び抱きしめた。
 距離が短くなったことに安堵し、つま先立ちになって彼により近づく。

「僕・・・バイト終わったら先生に逢いに行っていいですか?」
   
 メガネのレンズ越しで紅い目を丸くする男の反応に、新八は笑みを浮かべた。
 柔らかで愛しい笑顔に、銀八はふっと力を緩めるとにやりと口端を吊り上げ笑みを向ける。
 彼らしい笑顔に、新八も白衣の背中に腕をまわした。

「ごちそう作って、ツリー飾って、待っててやんよ」
「ケーキもお願いしますね」

 まかせとけと力強い返事が嬉しくて、当日のバイトは変に力が入ってミスのしないようにしなければと
 今から己に言い聞かせることになった。

 ついでにお泊りになりそうなことに、緊張も徐々に膨らんでいくことになる。














※       ※   
>>postman  お題より
逢いたい気持ちは一緒

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