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真選組隊士新八 銀新
※ ※
真選組局中法度45条(最近1つ追加されたことが発覚)の裏には、隊士達の間で暗黙のご法度が存在する。
それを破れし者にはそれ相応の粛清を受けねばならない。
真選組に入隊してすぐの頃、それはもう恐ろしい虐相をした目上の先輩にそう教わった。
当時は「はぁ・・・そうですか」と、特に気にならない返事を返したものだったが、今ならその恐ろしさが良く分かる。
「今年の24日か25日のどちらか、お休み頂けませんか?」
そう上司に告げた僕を、周囲にいた隊士達全員がいっせいに僕を睨んだからだ。
聞いた場所が悪かった。
命のやりとりをする緊迫した職業柄、唯一心安らげる食堂でなら食事の会話中にさりげなく聞きだせると踏んだ僕が悪かったのだ。
「理由は?」
上司の問いはもっともだ。
しかしたった今、肝を冷やす思いをしている僕にはその理由を告げた瞬間にどんな目にあうのか。
それを考えるだけで恐ろしい。
「ぇー・・・・・・と」
口ごもる僕に上司は小首をかしげ、周囲のハイエナ達は僕の命を狙う。
これだけの殺気になんで気づかないだろうこの上司は。
だから女性にもてるくせに皆寄ってこないんだよ。
そんな僕に助け舟ならぬ、泥舟がスイスイやって来た。
「あれれ土方さん、まだ気づかないんですかぃ?」
よりによってこの男だった。
頭痛する額を思わず押えてしまう僕は、何も悪くない。
「総悟。お前なら知ってるってことか?」
「野暮だなぁ~土方さんは。この時期に休暇とるってことは、考えるまでもないでしょう土方死ね」
「てめぇが死ね。てゆーか・・・え?」
「そーゆうことでさぁ。ね!新八君?」
嗚呼やめて!お願いだからもうやめて!
周りの視線が痛い!!すんごく痛いんだけどおおおおお!!!
「ああ・・・ごほん。そうゆうことなら、別にとやかく言うつもりはねえよ。お前にはいつも良く働いてくれてるしな。分かった、どっちか休めるよう調整かけておいてやる」
・・・・土方さんって本当は優しい方なんですね。
「ぁ・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとうございます」
僕はもう滝のような涙と汗を流すしかない。
『てめぇ後で裏にこい』そんな視線がビシビシ僕を突き刺す。
ぐったりと胃をおさえる僕に、さらなる追い討ちがぶっ潰した。
「ところで・・・あー志村」
「・・・ふぁい」
何故か額に汗を流す上司は、しどろもどろと言った風に黒髪の後ろをがしがしと掻く。
その仕草が、今回僕に休暇を取らせる要因を作った銀髪の彼の癖によく似ていた。
そう思い出したら、胸がキュンとした。
・・・・ナニコレ。ああもう、やだな。もう・・・。
部下の色恋に照れた鬼の副長は、頬を気持ち悪く赤らめ普段見ることの無い表情で僕にしか聞こえないように――
しかし地獄耳の周りには筒抜けの声でそっと、僕の耳に手をあてて言ったのだった。
「・・・デート、楽しんでこいよ」
爆弾投下。
安全地帯は壊滅。
一気に氷点下と化した食堂の温度と、いつのまにか逃亡していた沖田隊長、そして逃げ場を失った僕。
脳裏によぎったのは、局中法度の裏のご法度。
真選組局中法度幻の第47条「クリスマスに休暇を取る者は切腹すべし」
むさ苦しい男所帯だからこそ、世にも恐ろしい暗黙のルールだった。
(別にデートの相手は女性ってわけじゃないのに・・・・)
そんなツッコミという名の言い訳すら、この場を静めてくれそうにない。
この時期に希望どおりの休暇を貰えることに、素直に喜べない僕だけが取り残されたのだった。
※ ※
>>postman お題より
ついでにいえばデートの相手にはもれなく娘とペットもくっついてきます。
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