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く   くだらない、なんて興味のないふりをして

仔銀と新八

立場逆転、万事屋新ちゃんと松陽先生にではなく新ちゃんに拾われた仔銀
神楽ちゃん定春や他はそのまま。
新ちゃんの年齢はたぶん大人だけど見た目そのまま










※         ※

「ねぇ銀く~ん、お願いだよぉ~」

 舌ったらずな甘えた声を出して相手の気を惹こうとする万事屋の青年と、そんな声を聞いて頬をわずかに赤らめてはぷいっとそっぽ向く白い綿毛のようなモコモコした天然パーマの銀髪の少年。
 彼らの攻防戦は数時間前から続いている。
 先に音をあげてたのは酢昆布を齧る少女の方で、青年が用意したクリスマスコスプレ用のサンタガールに身を包みソファで愛犬とだらだら過ごしていた。
 赤いワンピースのひらひらミニスカが可愛らしい。
  
「銀ちゃーんいいかげん観念するネ。新八ーわたしお腹すいたヨー」
「ごめんね神楽ちゃん、もう少しだけ待っててね」
「早くしないと先にクリスマスパーチィーに行っちゃうヨ。ねっ定春!」
「銀くん大変だよ!神楽ちゃん先に行っちゃうって!さっ早くこの衣装を着て一緒に行こうね!」
「・・・・・・。」

 急かすフリをし、幼い銀時用に用意していたサンタの衣装をちゃっかり差し出す新八にジト目で見つめるとまた、横を向いてしまう銀時。
 少年のしぐさは嫌々でしているのではなく、照れているだけである。
 そんな幻想を抱く新八は、目の前のシャイなあんちきしょーに(可愛いなぁ~もう)とデレて止まない。
 新八の理想とは逆に、85%本気で嫌がっている銀時の様子に神楽は同情したが助けようとしなかった。
 新八に本気で抵抗など、できるはずがないのだ。
 だって、自分もそうだったから。

 このサンタ衣装は、金欠である万事屋を営みながら子供二人+一匹を養う新八が夜なべして手縫いで作ったものだった。
 些か不器用な面をもつ新八であるが、子供たちとペットへの愛情はたっぷりで
 子供たちを拾ったあの日から、この子達が立派に成長するまでは結婚などしないと豪語するほどだった。
 
 そんな新八の愛を受けすくすく成長する銀時と神楽、そして+一匹。
 今日は柳生家で行われるクリスマスパーティーに招待されていたので、そのための余所行き衣装に手間取っていた。
 神楽と銀時は小さなサンタ、定春と新八はトナカイの衣装を着て皆に楽しんでもらおうと言うのが新八のプランだったが、肝心の銀時がソレを嫌がる。
 幼い銀時の、幼いなりの男としてのプライドがあり
 新八はそれを重々承知の上でサンタのコスプレを強要するのは、銀時を拾った日から初めて向かえるクリスマスを純粋に楽しんで欲しかったからだった。
 幼子がそれまで経験してきた殺伐とした非日常を、それが銀時の全てにして欲しくはなかった。
 もっと、子供でなければ経験できない驚きや嬉しいこと楽しいことをもっと知って欲しかった。
 めったに見せてくれない笑顔を、これから共に経験する日常の中でたくさん見たかった。
 ――ただ単に可愛いサンタコスが見たかったからではけして無い。いや、けして無い。 

「銀くん、僕ね。銀くんと神楽ちゃんと定春が家に着てからずっと、今日が楽しみでしかたがなかったんだ」
「・・・・」
「だってね、僕ら三人と一匹で初めて向かえるクリスマスなんだよ?こんなにワクワクするクリスマス、僕初めてなんだ」

 まっすぐ銀時の紅い瞳を見つめ語る新八の笑顔に、銀時はぐっと奥歯を噛み締めた。
 そうでもしなければ、新八の暖かすぎる愛情に眼が熱くなり涙がでてしまいそうだった。

 幼い銀時の持つ男としてのプライドがそれを許さない。
 初めて愛しいと思える相手の前で、そんな無様な姿だけは晒したくなかった。

 銀時の目線に合わせ腰をしゃがみ、顔を覗きこむように上目遣いになる新八の大きな瞳に照れた銀時は頬だけで無く耳まで真っ赤に染め、横を向きわざとらしく溜息をついた。
 なんでもないフリで大人っぽい仕草をしてみせる銀時の子供らしい表情に、ついつい胸をキュンキュンさせ抱きしめたくなる衝動を堪えている新八に、神楽は呆れた目線をやる。
「ちっ仕方がねーなぁ。今日だけだぞ」
 変声期前の高い少年の声で生意気に呟かれたが、新八はそんなことを気にしない所か大喜びした。
「本当に!?やったーー!」
 両手を挙げて喜ぶ新八の笑顔に、銀時は横目で見つめて少しだけ口元をはにかんで見せた。
 銀時のその姿に、新八はぎゅうぎゅうに新八を抱きしめ「可愛いなぁ可愛いなぁ~」と頬をさすった。

 自分のことを想い、自分の為にしてくれる暖かで優しい好意はとても嬉しい
 相手が笑顔になってくれると自分も笑顔になるし、自分が笑顔になれば相手も笑ってくれる。

―――それはなんて眩しくて、自分にはもったいない幸せ。

「神楽ちゃーん!もうすぐで準備整うからもうちょっと待っててね!」
「マジでか!?わたしお腹ペコペコで胃とくっつきそうヨ!パーチィーのごちそうは全部神楽様が頂くネ!」
「おいケーキだけは俺のもんだぞ」
「銀くん、そんなに甘い物ばっか食べてると将来糖尿病になっちゃうよ?」
 
 
 だけど、こんな風に抱きしめられると少し困る。
 嬉しい行為なのに、男としての悩みどこを幼いなりに立派に悩ませる銀時だった。
 これからどんどん、その悩みは膨らんでいくのかもしれない。

「銀くん神楽ちゃん定春、メリークリスマス!」 


 それならば、その分だけ一人前の男になってやろう。
 愛しいこの人と、愛する“家族”を守れるぐらいの―――。

 そして、自分の悩みの分だけ
 いつか自分のことで同じ悩みで悩んでほしい。
 
「メリークリスマス、新八」

 愛する、愛する人よ―――。 












※        ※
>>postman お題より
貴方が笑えば、僕のしあわせ 

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